鹿島槍ヶ岳・東尾根

期  日  2004年4月10〜11日

メンバー 吉本、田中

行動記録

  4月10日 大谷原6:05〜一ノ沢ノ頭9:30〜二ノ沢ノ頭11:00〜第一岩峰12:40〜第二岩峰取付14:50〜終了15:50〜北峰16:40〜中間コル16:50(幕営)

4月11日 出発6:30〜南峰7:10〜冷池山荘8:25〜高千穂平10:10〜赤岩尾根出発点11:30〜大谷原12:30

    10日 ゲート前には車が既に10台もあり、鹿島槍の人気の高さがうかがえる。ルートの渋滞は避けたいので早々に仕度をして出発する。天気は快晴だ。東尾根取付きの赤布から急登で息があがる。先行していた単独行の写真家に追い付く。ここまで4×5を担ぎ上げたらしい。どんな写真が撮れるのか拝見したい。

順調に高度を稼ぎ一ノ沢ノ頭を通過する。ここまで来るとルートの全容が目前にそびえていて、登高心をそそられる。途中でブッシュまじりのいやらしい雪壁が現れたのでためらわずにロープを出す。足が決まらずズルズル滑るがWアックスでなんとか越える。二ノ沢ノ頭に着くころには4パーティ合わせて10名ほどがこれから登る急な雪壁を見上げて一緒に休む。

気温が高く、1Lの水筒では持ちそうに無いので雪を足して冷やす。計画では今日の行動はここまでだったが、予定の時間より早いことと、2人とも余力充分なので第一岩峰を越えることにする。先行のパーティがルンゼ状を登り始めるが、雪崩そうで怖いなと吉本さんと話す。次にスタートした我々はルンゼを避けて岩場を慎重に登る。

岩峰を超えてからはナイフエッジで荒沢側の雪庇と今にも崩れそうな足元のトレースに神経がピリピリ張りつめる。万が一のことを考えて吉本さんとの距離を保ちながらトラバースする。岩峰の中間点にテントを張れる場所があるという情報もあったが、現実はヤセ尾根続きで無理。

いよいよ核心部の第二岩峰が目の前に現れた。ほぼ垂直に見える岩峰は迫力満点だ。上部と取り付きに2パーティいる。この場所にいる者だけが見ることのできるアングルに思わずシャッターを切る。

 

ルートが空くのを待つ時間は長く感じる。ようやく前が空き、吉本さんがリードで登り始める。裏側に回り込んで見えなくなり、しばらくすると動きが止まる。「田中さん、頼むよー」と声が掛かり、厳しいところに来たなと察知する。「OK!」と声を返し、ビレイの手に汗にぎる。そのうちにスルスルとロープが流れ出し「ビレイ解除」のコールがかかりホッとする。

今度はオレの番だ。取り付いて分かったが、20キロのザックを背負ってのクライミングは厳しいものがある。残置スリングをゴボウで掴み、エイヤッで登るが腕が攣りそうになる。どうにかたどり着き、後は快適な雪稜を北峰に向かって直上する。

 

北峰ピークでがっちり握手を交わし、中間コルの幕営適地に着いたときには2人ともヘロヘロだった。

小さなスコップ一本では作業がはかどらず、隣のテントからもう一本借りて設置スペースを掘り下げる。楽しみにしていた夜の宴だが、のんべえ吉本さんでさえあまり進まず、早々に寝ることにした。夜空は満天の星。明日は下るだけなので気が楽だ。

11日 陽が昇ってからゆっくり起きる。今日も天気は良さそうだ。ここから見る剣山は見事な山容である。コッヘルには夕食の炊き込みご飯が大量に余っていて、雑炊にして片付ける。テントを撤収して出発。昨日の疲れが残っていて足が重い。南峰ピークを踏み、冷池山荘へ。

真っ白な冬毛に少し褐色が混じった雷鳥を数羽見かける。まだ餌が少ないせいか縄張り争いをしている様子だ。雪山にも春は確実に訪れている。山荘から赤岩尾根への下りはかなりの傾斜で、後ろ向きでアックスをきかせながら降りる。デブリの痕もあるので、静かに速やかに通過したいがアイゼンが団子になり時間がかかる。雪が緩む今の時期は重要な問題である。次回は対策を考えよう。後ろから来た2人は西沢を下って行った。しばらくして地響きが鳴り、ドでかい雪崩が沢に落ちる。あの2人は大丈夫だっただろうか?

今朝発った山頂を振り返り、「今回の山は結構きつかったけど自信がついたね。」と吉本さんと話しながら無事下山した。 (記 田中)